新日本プロレスvsUWFインターナショナル 全面戦争
ファンとしては一番燃え上がったプロレス観戦はやはり“ジュッテンキュー”「新日本プロレスvsUWFインターナショナル 全面戦争」に尽きます。あの時の興奮は、二度と味わえないように思います。
武藤敬司vs高田延彦で東京ドーム超満員札止め
この日の興行はある種、ワンマッチで東京ドームが超満員札止めになったと言っても過言ではありませんよね。
ワンカードで東京ドームフルハウス
突如実現した「新日本プロレスvsUWFインターナショナル全面戦争」東京ドーム大会。なぜ実現したかの裏事情は、昨今明らかになっているわけですが
当時はまだ高校三年生な純朴な私(苦笑)。素直に驚きましたし、興奮したものです。
新日本プロレス社内でマスコミに公開された長州力と高田延彦、団体トップ同士の電話会談であっという間に対抗戦が決定。「ドーム抑えろ」の長州名言はあまりにも有名。
当時、私は一塁側1階スタンド上段あたりで観戦しておりました。
↓確か、このあたりだったように記憶しています
(新日本プロレス 2020年1月5日東京ドームより)
(KENTAによる「デハポン破壊事件」)
超満員札止めな東京ドーム。当日は、チケットが本当に1枚も無かったそうです。
チケットが1枚もない東京ドームのプロレス興行。今となっては夢物語ですが、実際にあった話。それはメインイベント
「IWGPヘビー級選手権試合 王者・武藤敬司vs挑戦者・高田延彦」
まさか,こんなスーパードリームマッチが実現するとは、当時狂喜乱舞したものです。
ジャニーズで言えば、嵐に急遽再結成したSMAPが挑むような構図と言っていいでしょう(わかりずらい)。
実況席には解説でアントニオ猪木。猪木をして
「胃がこうぐーっと突き上げてくるとでも言いますか・・・」
「今日はあまり喋りたくないとう感じで・・・」
という言葉。それだけの緊張感を感じさせるメインイベントだったわけであります。
誰も予想出来なかった試合内容とアントニオ猪木
試合もどんな内容になるのか、全く読めず。試合スタイルや考え方や姿勢が水と油だった両団体。
高田延彦と言えば、あの北尾光司に右ハイキックで「仕掛けた」ことで有名。プロレスはある種信頼関係で成り立っているジャンルでもあるので、高田延彦が「禁を破るのでは?」と当時の新日本プロレスサイドとしては気にかけ、ピリピリしていたこことでしょう。
実際、一つ前の試合で中野龍雄から勝利を挙げた橋本真也がリングサイドに膝をつき、鋭い目線をしていたのがそれを物語っているように思います(故ブラックキャットさんの眼差しも怖い。。)
試合自体はある種クラシカルな展開。
それは序盤のグランドの攻防、そしてドラゴンスクリューから一気に試合が動き、フィニッシュの足四の字固めに至る流れがそう感じさせます。
そんなクラシカルな展開が不満だったのが、実況席のアントニオ猪木。
要は、スポーツライクでない殺気だったプロレスが見たかったということなんでしょうね。それは、まさに猪木プロレス。良い試合ででなく、凄い試合を求めていたんだと。実際解説で「迫力のある怖さの試合を」と仰ってます。
実は私も興奮はしましたが、観戦していて正直どこか物足りなさを感じていました。観戦中はそれが何かはわかりませんでしたが、後日テレビ朝日「ワールドプロレスリング」での放映で猪木が言っていたことに「そう、まさにそれ!」と合点がいったといいますか。
高田サイドとしては、そんな刺激的な「猪木の思考寄り」の展開でも対応するつもりだったのでしょうが、ここで凄いのが武藤敬司。一切自分のペースを崩さず。フィニッシュまで、とうとう自分のプロレスをやり切ったしまうと。
彼はどこか天然でいてプライドの塊。人のまねを嫌い、オリジナルを大事にしている人。それでいて自分を抜きんでる後輩には嫉妬が激しいという(苦笑)。
武藤敬司はプライドの塊
それが思い切り現れたのが、新日本プロレス2015年8月「G1クライマックス優勝決定戦 棚橋弘至vs中邑真輔」の一戦で、第1回G1クライマックス優勝決定戦の相手だった蝶野正洋とともに解説席に座った武藤敬司。
試合途中に出てくる「俺の方が、俺たちの方が凄い」というようなニュアンス連発な解説で、あの試合自体は動画サイト「新日本プロレスワールド」で見たいのに、彼の「俺すげー」解説が邪魔で見たくないという辛い状況(苦笑)。解説で、しかもG1優勝戦でそういうこと言う!?と、実況の野上アナウンサーも辛かったことか(笑)。
それぐらいのプライドの塊な武藤敬司。リングサイドでみている「もっと殺気を出せ」という猪木の気持ちをも見透かす、自分のペースでのクラシカルな攻防だったわけです。フィニッシュもまさか足四の字とか、まさかでしたね。
でも、高田から3カウントでなく、その足四の字固めでギブアップ勝ちというのは、大きかったですし、その後の武藤敬司のプロレス人生に大いに影響し、今に至ってるますよね。
今では当たり前になった「ドラゴンスクリューから足四の字固め」というデフォルトムーブは、この時誕生したわけです。
武藤高田戦はオカダ・棚橋・内藤達の源流
殺気立たなかった、スポーツライクな「史上最大の決戦」な武藤高田戦から25年余り。
この2人の試合が、源流なのでは?と思う時があります。
現在の新日本プロレス最先端であるオカダ・カズチカ、棚橋弘至、内藤哲也らの試合。流れるような展開は、時に「組体操」「ダンス」などと揶揄されます。しかし、現在のファンが支持している厳然たる事実。その揶揄されがちな試合内容は、クラシカルな匂いもします。
今の新日本プロレスの高レベルな試合内容の試合の数々。その源流は「武藤高田戦」にあり、と言っても過言ではないかなと思います。